名古屋高等裁判所 平成11年(ネ)865号 判決
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、七七七四万三二六五円及びこれに対する昭和五四年六月八日から支払済みまで年一四パーセントの割合(年三六五日の日割計算)による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。
4 仮執行宣言
二 被控訴人
主文同旨
第二 事案の概要等
前提事実、当事者の主張及び争点は、次のとおり当審主張を付加するほか、原判決「事実及び理由」の「第二 事案の概要」の各該当欄に記載のとおりであるから、これを引用する。
一 控訴人の当審主張
1 大亜建設に関する会社更生手続においては、控訴人の届け出た更生担保権全額につき管財人から異議が出され、控訴人が管財人を相手に更生担保権確定訴訟(別件訴訟)を提訴したため、本件更生計画では、①控訴人届出の更生担保権を未確定更生担保権として、届出債権(元本)一億五七九四万四六一二円について一般更生債権として計上し、内二三六九万一六九二円について他の一般更生債権者と同様に一般更生債権弁済計画のとおり分割弁済すること、②更生担保権として確定したときは、本件更生計画中更生担保権につき定めるところにより、他の更生担保権と同様に元本全部を弁済することが定められた。
つまり、控訴人届出の更生担保権については、その被担保債権の存在については争いがなかったが、その担保物件の評価額に争いがあったため、とりあえず、一般更生債権としての弁済を開始し、それが更生担保権であることが確定したときは、更生担保権としての弁済額(元本金額)と一般更生債権としての弁済額(元本の一五パーセント)との差額を追加弁済する旨定められたものである。
2 その後、別件訴訟において、昭和六三年二月五日、控訴人と管財人との間で、「更生会社(株)大亜建設所有の土地が、将来、売買にかかる一切の費用を控除した残金が一平方メートル当たり九九〇円を越える金額で他に売却された場合には、管財人は控訴人に対し、右超過金額の半額(ただし、一億三四二五万二九二〇円を上限とする。)を右売買代金全額受領後一か月以内に支払う。」旨の訴訟上の和解(本件和解)が成立した。
右和解は、担保物件が将来売却されたときの売買代金を基準として算出した和解金額をもって、控訴人に対して支払われる(追加)弁済額とする(その結果、控訴人の届出債権のうち、更生担保権となる債権額と一般更生債権となる債権額とが確定し、本件更生計画の一般更生債権の弁済に関する定めにしたがい免除額も確定する。)という趣旨で成立したものである。
そして、右の和解金が、更生担保権に対する(追加)弁済金としての実質を有していたことから、和解金額の上限も控訴人の届出債権(元本)の八五パーセントに相当する一億三四二五万二九二〇円(一般債権であれば免除されるが、更生担保権であれば追加弁済を受けられる金額)と定められたのである。
3 したがって、控訴人の未確定更生担保権のうち、更生担保権として確定する額がいくらであるか、すなわち、一般更生債権となる額及びその免除額がいくらであるかは、担保物件の全部又は一部が売却され、本件和解の定めにしたがい算出される和解金額が支払われることによって確定することになり、その売買代金額によっては、右届出債権(元本)の全額が更生担保権となることもあれば、その全額が更生担保権とならない結果に終わることもあり得るから、当然それまで免除額も確定しない。
4 その後、担保物件全部が売却され、本件和解に基づき、控訴人は管財人から、平成二年二月一六日に五〇〇〇万円の弁済を受けた。その結果、ようやく、控訴人の未確定更生債権のうち、更生担保権として確定する額と、その結果、一般更生債権となる額が確定し、さらに、一般更生債権としての免除額が確定することとなった。
5 そうすると、本件連帯保証債務の主たる債務につき、免除の額及び効果が確定した平成二年二月一六日から、本件連帯保証債務について、中断していた消滅時効の進行が開始することになる。
6 被控訴人の当審主張1に対する反論
最高裁判所昭和五三年一一月二〇日判決が、主たる債務の免除を定めた更生計画の認可決定確定時に、連帯保証債務について時効中断の効力が失われると判示したのは、通常は、更生計画認可決定確定時に主たる債務の消滅が確定し、会社更生手続における債権者の権利行使が終了することを根拠とするものである。
したがって、本件のように、更生計画認可決定が確定しても、債権が更生担保権であるか、一般更生債権であるかが未確定であり、その結果、主たる債務の免除額も未確定のまま残り、更生担保権確定訴訟が終了するまで右の点が確定しない事案については、更生計画認可決定確定時に連帯保証債務につき時効が進行し始めるとすることはできない。
なお、会社更生手続における権利行使により、連帯保証債務についても時効中断の効力が生じるのは、それが連帯保証債務の履行請求を妨げるべき障害となることを理由とするものではなく、主たる債務につき生じた時効中断の効力が連帯保証債務にも及ぶことを理由としているのであるから、債権者が連帯保証人に対し、いつから連帯保証債務の履行請求ができたかという問題とは全く無関係である。
7 被控訴人の当審主張2に対する反論
(一) 認可決定を受けた更生計画の変更手続(会社更生法二七一条)は、更生計画認可決定後の経済情勢その他の事情の変化等のやむを得ない事由により、更生計画の一部又は全部の履行が不可能もしくは困難となったが、更生計画を変更すればかかる事態を回避でき、企業の維持更生が達せられることから、その変更をする必要が生じたときのために設けられた制度であって、更生計画の記載内容に変更が生じた場合は、それがどのようなものであっても、常に更生計画の変更手続を取らねばならない訳ではない。
(二) ところで、本件更生計画においては、控訴人の債権は未確定更生担保権であり、そのために、その債権は一般更生債権として計上され、それが更生担保権として確定したときに、本計画中更生担保権につき定めるところにより弁済するとの的確な措置(会社更生法二一五条)が定められていた。したがって、後に控訴人の債権の全部又は一部が更生担保権であると確定した場合にも、本件更生計画を変更することなく、右「的確な措置」にしたがって処理すれば十分対応可能であった。
そこで、右のような事態となっても、管財人において、裁判所に対し、本件更生計画変更の申立をする必要はなかったし、そもそも更生計画変更申立の要件を満たさないので、本件更生計画変更申立をすること自体ができなかったものである。
本件和解についても、もともと更生計画変更申立をする必要はなかったのであり、それ故に、本件更生計画について、控訴人の債権にかかる変更手続が取られていないことは、本件和解で定められた和解金が、本件更生計画に定めた弁済計画に変更を及ぼさない紛争解決金であるとする根拠とはなり得ない。
(三) 本件和解に基づき、管財人が控訴人に対して支払う和解金の法的性質は、更生担保権の弁済金である。そのため、管財人は、控訴人に対し、平成元年一一月一六日付けで「和解における貴行に支払うべき金額ですが、これは更生担保権の弁済となりますので」との書面(甲一〇の1)を送付している。
(四) 本件和解で定められた和解金は、更生担保権として認められる債権元本金額ではなく、更生担保権に対する追加弁済金である。
本件和解が成立した昭和六三年二月五日の時点においては、すでに本件更生計画に基づく一般更生債権に対する分割弁済は第五回目まで終わっており、最後の弁済は昭和六四年五月三一日と定められ、残り二回の分割弁済もあと一年四か月で終了する予定であった。
しかし、昭和六一年五月に管財人が裁判所に提出した更生計画案一部変更申立書(甲九の17)の第一の二、同年一〇月一四日付け更生計画変更認可決定(甲九の18)の記載から明らかなように、南勢町の土地を昭和六二年度から昭和六四年度の間に売却することはほぼ不可能という状況であり、当然、一般更生債権に対する分割弁済が昭和六四年五月三一日に終了する前に南勢町の土地が売却される見込みもなかった。
したがって、管財人及び控訴人としては、本件和解に基づく和解金が更生担保権と認められる債権元本そのものであるとするならば、右和解金支払よりも先に一般更生債権に対する分割弁済が終了し、一般更生債権に対する分割弁済金を減額するという方法で右過払い分を調整することは不可能であり、過払い分の調整は、右和解金の支払いの際に行うしかなかったので、当然、本件和解に過払い分調整に関する条項を定めていたはずである。
ところが、本件和解にはかような定めはなく、本件和解で定められた計算方法により算出された金額そのものを控訴人に支払うとされているから、本件和解が成立した当時の状況を考慮すれば、管財人及び控訴人が、「右和解金は更生担保権と認められる債権元本金額ではなく、更生担保権と認められる債権元本金額に八五パーセントを掛けた更生担保権に対する追加弁済金である。」として、本件和解を成立させたことは明らかである。
つまり、管財人と控訴人は、本件和解において、直接的には控訴人の更生担保権に対する追加弁済金の支払につき定めることによって、控訴人の債権のうち、更生担保権と認められる債権元本金額を間接的に定めたものと解することができる。
そして、右和解金額については、その後、控訴人と管財人との間で、「五〇〇〇万円と約定し、平成二年二月一五日限り支払う。」との合意が成立し、平成二年二月一六日にその支払がなされ、その支払がなされたときに、控訴人と管財人との間で、控訴人の債権のうち、更生担保権と認められる債権額及び一般更生債権と認められる債権額がそれぞれ確定し、一般更生債権と認められる債権元本額に八五パーセントを掛けた金額につき、その支払が免除されることが確定した。
二 被控訴人の当審主張
1 会社更生手続が開始した以後は、更生債権者、更生担保権者が更生会社に対して有する債権の権利行使は会社更生手続によらなければならないとされているけれども、更生債権、更生担保権を有する者が会社更生手続外で連帯保証人に対し連帯保証債務の履行を求めることについて会社更生法は何の制約も加えていない。
本件に即していえば、控訴人が被控訴人に対して負担している連帯保証債務は、更生会社が履行遅滞に陥ったとき(会社更生手続開始の申立てがなされた昭和五四年六月二二日)に履行期が到来しており、控訴人はこの時点から被控訴人に対し、連帯保証債務全額の支払を請求することができた。
会社更生法は、会社更生計画において更生債権者、更生担保権者の権利の変更が行われ(同法二二二条ないし二二六条)、その影響が連帯保証人、物上保証人に及ぶことをも考慮して、これらの変更の生ずる時期とその効果並びに更生債権者、更生担保権者の会社更生手続への参加が終了したことを明文で定めることで(同法二三六条、二四五条)、無用の混乱を生ずることのないようにとの配慮をしている。
そして、会社更生計画において、債務の免除が定められた場合には、右会社更生計画認可決定確定の時点で債権消滅の効果を生ずるとともに、更生債権者、更生担保権者の会社更生手続上の権利行使は終了したこととなり、連帯保証人に対する関係では、同条五条による時効中断の効力も失われ、債権消滅の時効期間が進行を開始するとされている(最高裁判所昭和五三年一一月二〇日判決)。
更生債権又は更生担保権に関して争いのある場合にあっても、その債権の存否そのものが争いになっていて、その影響が直接連帯保証債務の存立について及ぶこととなるため、当該更生債権確定訴訟、更生担保権訴訟が終了し、その内容が裁判上確定するまで連帯保証人がその債務を負担するのかどうか確定できないようなケースは別にして、控訴人と管財人間の更生担保権確定訴訟のように債権の存在については当事者間に争いがなく、根抵当権の目的たる不動産の評価額だけが争われている事案にあっては、会社更生計画認可決定が確定しさえすれば、控訴人の連帯保証人に対する連帯保証債務の履行請求を妨げるべき障害は全部消滅したというべきであるから、控訴人が被控訴人に対して有する連帯保証契約による債権の消滅時効は原則どおり、会社更生計画認可決定確定の日である昭和五七年三月三〇日から進行すると解すべきである。
2 そうでないとしても、管財人と控訴人との間で本件和解が成立した時点から、消滅時効の進行が開始すると解すべきである。
すなわち、①控訴人が更生担保権確定訴訟において求めていた請求の趣旨は、一定金額について更生担保権を有することの確定を求めたものであったけれども、本件和解には、更生担保権として確定した債権の表示は全く含まれていないこと、②会社更生計画は、控訴人の提起した更生担保権確定訴訟の関係では、「更生担保権として確定したときは、本計画中更生担保権につき定めるところにより弁済する。」との対応を定めていたが、右裁判上の和解では会社更生計画に定めた弁済計画に変更を及ぼさない和解金を支払う内容となっており、会社更生計画には何の変更もなかったことから、訴訟当事者であった管財人と控訴人は、本件和解が、会社更生計画の内容に影響を及ぼさないように処理することで、意見が一致しており、最初から会社更生計画の内容についての争いがなかったのと同じ扱いとすることについての合意があったと見られるからである。
仮に、本件和解が、更生担保権の確定を含むものであったとすれば、会社更生計画中、①更生担保権弁済計画表に控訴人のために確定した更生担保権とその弁済金額を追加し、②一般更生債権弁済計画表の控訴人に関する確定債権額、免除額、弁済額につき、右確定した更生担保権に対応した金額の減額がなされてしかるべきであるが、かかる手続は行われていないのである。
第三 当裁判所の判断
一 引用にかかる原判決の前提事実に証拠(甲六ないし八、乙一、四)及び弁論の全趣旨を総合すれば、①控訴人の届け出た更生担保権について管財人から異議が出されたため、控訴人は管財人を相手に昭和五五年三月二五日に別件訴訟を提訴したこと、②そのため、本件更生計画では、控訴人届出の更生担保権を未確定更生担保権として、届出債権(元本)一億五七九四万四六一二円について一般更生債権として計上し、内二三六九万一六九二円について他の一般更生債権者と同様に一般更生債権弁済計画のとおり分割弁済する、更生担保権として確定したときは、本件更生計画中更生担保権につき定めるところにより、他の更生担保権と同様に元本全部を弁済するという措置が定められたこと、③本件更生計画の認可決定は、昭和五七年三月二日になされ、同月三〇日に確定したこと、④別件訴訟は、昭和六三年二月五日本件和解により終了したが、その和解の内容は、別紙和解条項に記載のとおりであること、⑤管財人は、控訴人に対し、本件和解に基づき、平成二年一月一〇日に、「別紙和解条項一項の金員を五〇〇〇万円と約定し、これを平成二年二月一五日限り控訴人に支払う。」旨の念書(甲八)を交付し、同年二月一五日に五〇〇〇万円を支払ったことが認められる。
二 ところで、更生債権者あるいは更生担保権者がその債権ないし担保権を届け出て更生手続に参加すると、時効中断の効果が生ずる(会社更生法五条)が、その中断された消滅時効の期間がいつから再び進行を始めるかは、更生手続参加に時効中断の効力を認めた法の趣旨に照らして決すべきである。そして、更生手続参加は、更生会社の債権者が更生手続においてその債権を主張し、その確定を得たうえ更生計画実施による満足を得るために行うものであり、右の債権の確定は届出、債権調査、更生債権者表又は更生担保権者表への記載、更生計画による権利の変更といった一連の手続によって行われ、これらは全体として債権者の権利行使としての実質を有するのであって、ここに更生手続参加を時効中断事由とした理由がある。そうすると、更生計画において免除されることとなった債権については、その免除の効果が確定するまでは更生手続内で権利行使がされており、右効果が確定することによって右債権は確定的に消滅するが、これを主債務とする保証債務がある場合、右保証債務は、会社更生法二四〇条二項により右免除によって影響を受けないものとされる結果、以後更生手続と全く無関係なものとして存続することになるから、このときに保証債務について時効中断事由がやむものと解される。
三 そこで、まず、本件更生計画の認可決定の確定により、更生担保権者である控訴人の債権が免除されたこととなるのか、すなわち、右決定の確定により、控訴人の更生手続参加により中断していた保証債務の消滅時効が更に進行を開始するのか否かにつき検討する。
しかるに、異議のある更生担保権は、会社更生法の定める更生担保権確定訴訟手続によって異議を排除するのでなければ、更生担保権として確定することはなく、したがって更生計画に基づく弁済を受けることはできない(会社更生法一四七条)が、更生計画において未確定の更生担保権について、その権利確定の可能性を考慮し適確な措置を定めなければならない(同法二一五条)うえに、裁判所はその確定訴訟の結果を更生担保権者表に記載しなければならず(同法一五三条)、その確定訴訟の判決は当事者のみならず更生債権者・更生担保権者及び株主の全員に対してその効力を有するとされている(同法一五四条)。
このような会社更生法の定めからすると、未確定更生担保権については権利確定訴訟という権利の確定手続を経なければ権利の確定、行使はできないのであるから、更生計画の認可決定により、右未確定更生担保権における主たる債務が免除されるものではなく、更生担保権確定訴訟の結果を待って確定すると解するのが相当である。
そうとすると、本件更生計画の認可決定の確定により、更生担保権者である控訴人の債権が免除されたこととなるものではなく、したがって、右決定の確定により、控訴人の更生手続参加により中断していた保証債務の消滅時効が更に進行を開始するというものではないということができる。
四 次に、本件和解の成立により、更生担保権者である控訴人の債権が免除されたことになるのか、すなわち、本件和解の成立により、控訴人の更生手続参加により中断していた保証債務の消滅時効が更に進行を開始するのか否かにつき検討する。
しかるに、①本件和解の条項は、別紙和解条項のとおりであるところ、控訴人の未確定更生担保権の帰趨についての明確な条項がなく、管財人から控訴人に支払われるべき和解金額は将来の土地の売買代金額を基準とする不確定な金額であること、②本件和解においては、控訴人は、土地の売買がなされた場合に、管財人が売買代金を受領するときまでに、売買の対象とされた土地に設定されている根抵当権を解除するとされていること、③その後、管財人は、控訴人に対し、本件和解に基づき、平成二年一月一〇日に、「別紙和解条項一項の金員を五〇〇〇万円と約定し、これを平成二年二月一五日限り控訴人に支払う。」旨の念書(甲八)を交付し、同年二月一五日に五〇〇〇万円を支払ったが、更生債権者表又は更生担保権者表への記載は全くなされなかった(弁論の全趣旨)こと、④控訴人は、本件更生計画認可決定確定後右念書の作成時までに、控訴人の債権(元本)一億五七九四万四六一二円について、他の一般更生債権者と同様、一般更生債権として内金二三六九万一六九二円の分割弁済を受けているが、本件和解及び念書においては、その清算について何らの規定もされず、実際にもその清算がなされていないことからすれば、本件和解の趣旨は、①控訴人の一般更生債権を更生債権者表に記載のとおり一億五七九四万四六一二円とする、②控訴人は、更生担保権を放棄し、更生担保権の額を〇円とする、③土地の売買にかかる一切の費用を控除した残金が一平方メートル当たり九九〇円を超える金額で他に売却された場合には、管財人は、控訴人に対し、更生担保権放棄の代償として、右超過金額の半額(ただし、一億三四二五万二九二〇円を上限とする。)の和解金を支払うというものであると解するのが相当である。
そうすると、本件和解の成立により、控訴人届出の一般更生債権及び更生担保権の免除額が確定したことになるというべきである。
なお、控訴人は「和解金の法的性質は、更生担保権の追加弁済金である。したがって、和解金を受領するまで、主たる債務の免除は確定せず、本件連帯保証債務の消滅時効も進行を開始しない。」旨主張し、管財人も、控訴人に対し、平成元年一一月一六日付けで「和解における貴行に支払うべき金額ですが、これは更生担保権の弁済となりますので」との書面(甲一〇の1)を送付していることは認められるが、右認定にかかる本件和解及びその後の念書につき更生債権者表又は更生担保権者表への記載が全くなされなかったこと、本件和解及びその後の念書においても、一般更生債権の清算につき規定されなかったことなどの事実からすれば、控訴人の右主張は採用し難いといわざるをえない。
また、控訴人は、「本件和解が成立した時点において、一般更生債権に対する分割弁済の完了前に南勢町の土地が売却される見込みがなかったことや、本件和解に一般更生債権の過払い分の調整に関する条項を定めなかったこと等からして、管財人及び控訴人が、「本件和解の和解金は更生担保権と認められる債権元本金額ではなく、更生担保権と認められる債権元本金額に八五パーセントを掛けた更生担保権に対する追加弁済金である。」として、本件和解を成立させたことは明らかである。」旨主張するが、一般更生債権の分割弁済の完了後においても、更生担保権が確定した場合には一般更生債権の過払い分につきその返還を求めることは可能であると解されることや、更生担保権が確定したのであれば更生債権者表又は更生担保権者表に当然に記載されるべきであるにもかかわらず、その記載がなされていないことからして、控訴人の右主張も採用し難いものである。
五 以上によると、中断していた被控訴人の控訴人に対する本件連帯保証債務の消滅時効は、本件和解の成立した昭和六三年二月五日から更に進行を開始するものというべく、商事債務の時効期間(五年)である平成五年二月五日の経過をもって本件連帯保証債務は時効消滅したものと認められる。
そうとすれば、控訴人の請求は理由がないから、これを棄却すべきである。
第四 結論
よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法六七条一項、六一条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官寺本榮一 裁判官下澤悦夫 裁判官内田計一)
別紙和解条項<省略>